〜☆恋愛学園物語☆〜(学園編)
「ダイキ君…」

手を差し出すと、
ダイキ君は…首を振った。
「菜月さん…もう寮に戻って…兄さんをまた怒らせてしまったり僕が居ると
菜月さんと兄さんとの仲を壊してしまいそうで…」

ダイキ君は私とリョウ君との仲を心配し、
悩んでいる様に見えた。

「大丈夫…ちゃんとリョウ君とは話するから、でも
今はダイキ君の傷の方が心配…はいっ」


アイスノンにタオルを巻き付けた物を、
ダイキ君の頭の下に引く。

頭を僅かに上げた隙
(すき)に、下に置いた。
腫(は)れた顔に、
氷の袋をつけると一瞬目を閉じるダイキ君。

「…ごめん」

ダイキ君に、
塗り薬りを渡し部屋を出ようと立ち上がり、
ドアに向かおうとした。

“ぎゅっと”
手を掴まれ振り返ると
薬を差し出し見つめてきた。

「…こっこの薬だけ…
塗って…貰えないかなっ?」

少し顔を赤らめ、
熱なのかはわからない。

私は薬を受け取り、
チュ‐ブから、
白い塗り薬を出し
白いシャツをめくり、
痛々しい傷に少し塗り付けた。

僅(わず)かに歪(ゆが)む顔が、痛みに耐えて居るような気がした。

「無理して塗らなくても」

ダイキ君は少し
引きつった顔をしながらも、少し首を振る。

「大丈夫…」

その言葉に少し違和感を感じ、ダイキ君の右腕を持ち上げると。

「うぅ…」

痛いのかうめき声を上げた今迄腕には傷は無かったはずなのに、
少し紫色のあざが…。

「ダイキ君どうしたの?
このあざ…前は無かったのに…」

ダイキ君は、答えない
あざの上を少し押すと、
首を左右に動かし、
答えてくれない。

「ダイキ君もしかして…
リョウ君と…」

ダイキ君は、
答えてくれない、
カリンちゃんの事も少し
気になるけど。

私は薬をベッドの横の棚に置き
自分の寮に戻った。

ダイキ君はその行動に止めなかった。




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