愛の花ひらり
ベストパートナー?(1)
敦を車で送迎するようになってから二週間ほどが経ち、要は社長秘書としての仕事も少しずつ身に付き始めていた。とは言っても、まだ優子のように完璧に敦の補佐をする事ができない為、彼が外回りをする時には優子の後ろを金魚の糞のように引っ付いて行き、現場での彼女の仕事のやり方を見学させてもらっているだけなのだが、優子のてきぱきとした所作には無駄がなく、それを目の当たりにした要はただ感心するばかりである。
「やっぱり優子さんはベテラン秘書なんですね」
「あら? それは褒め言葉ですか?」
会社に戻った要がホウッと感嘆の言葉を洩らすと、優子は柔らかい笑みではあったが、少し不服そうに感じた為、要は褒め言葉だと返すと、優子はデスクの上の開いているスケジュール帳にペンを走らせながら口を開いた。
「今の褒め言葉は聞かなかった事にしますわ」
「えっ? 何故ですか? 私は思った事をそのまま……」
褒められているのに不服そうな表情を見せる優子の気持ちが分からなくて要は動揺してしまう。
「秘書という者は身内……つまり、社内で素晴らしいと思われるのは当然だと思っていなくてはなりません。私達、社長秘書は社外の方から褒められてこそ価値があるのですよ」
社外と言うと取引先の事であるのは要にも理解できたが、何故に社外で褒められて、この社長秘書の価値があるのかと疑問が生じる。
要の悩んでいる姿を見ていた優子が優しい微笑みを投げ掛けてきた。
「社長秘書という役職は言うなれば、社長のもう一つの顔だと思っていて下さい。今までの仕事で、恐らく当麻さんは、この仕事は社長の賄のような感じに見ていると思いますが、実は全く違うのですよ。例えば、社長が役者だとすれば、社長秘書は役者が活躍する舞台の土台であり、ライトであり化粧の下地であり、台本であります。つまり、社長と秘書は常に信頼のおけるパートナーでなくてはなりません」
優子の説明はとても分かりやすく、要は思わず納得をする頷きを返していた。それを確認した優子もまた満足そうに微笑むと、要に次のスケジュールの調整の事で話題を切り替えてきた。
敦は分秒刻みのスケジュールの為、仕事とは関係のない話で花を咲かせている訳にはいかないのだ。
しかし、優子はこれだけは伝えておきたかったらしく、要にこの前のテレビの事について話し出した。
「今週の土曜日は、社長がゴルフ接待の為、私達はお休みです。あの方はゴルフだけはお一人で行かれますから。だから、その日にテレビの配達を頼んでおきました。午前指定にしてありますので、朝は家にいておいて下さいね」
「やっぱり優子さんはベテラン秘書なんですね」
「あら? それは褒め言葉ですか?」
会社に戻った要がホウッと感嘆の言葉を洩らすと、優子は柔らかい笑みではあったが、少し不服そうに感じた為、要は褒め言葉だと返すと、優子はデスクの上の開いているスケジュール帳にペンを走らせながら口を開いた。
「今の褒め言葉は聞かなかった事にしますわ」
「えっ? 何故ですか? 私は思った事をそのまま……」
褒められているのに不服そうな表情を見せる優子の気持ちが分からなくて要は動揺してしまう。
「秘書という者は身内……つまり、社内で素晴らしいと思われるのは当然だと思っていなくてはなりません。私達、社長秘書は社外の方から褒められてこそ価値があるのですよ」
社外と言うと取引先の事であるのは要にも理解できたが、何故に社外で褒められて、この社長秘書の価値があるのかと疑問が生じる。
要の悩んでいる姿を見ていた優子が優しい微笑みを投げ掛けてきた。
「社長秘書という役職は言うなれば、社長のもう一つの顔だと思っていて下さい。今までの仕事で、恐らく当麻さんは、この仕事は社長の賄のような感じに見ていると思いますが、実は全く違うのですよ。例えば、社長が役者だとすれば、社長秘書は役者が活躍する舞台の土台であり、ライトであり化粧の下地であり、台本であります。つまり、社長と秘書は常に信頼のおけるパートナーでなくてはなりません」
優子の説明はとても分かりやすく、要は思わず納得をする頷きを返していた。それを確認した優子もまた満足そうに微笑むと、要に次のスケジュールの調整の事で話題を切り替えてきた。
敦は分秒刻みのスケジュールの為、仕事とは関係のない話で花を咲かせている訳にはいかないのだ。
しかし、優子はこれだけは伝えておきたかったらしく、要にこの前のテレビの事について話し出した。
「今週の土曜日は、社長がゴルフ接待の為、私達はお休みです。あの方はゴルフだけはお一人で行かれますから。だから、その日にテレビの配達を頼んでおきました。午前指定にしてありますので、朝は家にいておいて下さいね」