この人痴漢です!

あれっ……?

なんか、おかしいかも。



彼は必死に『違います!』と言っておばちゃんたちから逃げる。




「あのっ!……ごめんなさい、勘違いでした……」





顔が真っ赤になる。


大騒ぎになった車内は、あたしの一言で静かになった。




「痴漢じゃ、ありませんでした……ご迷惑おかけしました」





おばちゃんたちは文句をいうわけでもなく、良かったわねぇと言って元の位置へと戻る。


渡る世間はやっぱり鬼なんかいないようで、誰も文句なんか言わない。





問題は……。



痴漢と疑ってしまった、彼だ。


おばちゃんの攻撃が終わってもなお、真ん中あたりの床に座り込んで呆然としている。
< 6 / 25 >

この作品をシェア

pagetop