今日で終わりにしてくれますか




繋いだ掌から伝わる体温が心地いいと感じたのは、初めてだったかもしれない

だって私、颯人と手を繋いだ覚えなんて1つもないもの

逆に手を繋がれたところで、アイツの冷たい掌なんかに安心を覚えるわけがない

凍え死んでしまうのではないだろうか


その、冷めた感情で


「紅鈴、屋上ってこっちの階段登るんだっけ」

「うん。あとちょっとだよ」


結局私は、颯人に何を求めているのだろう


颯人と庵を比べてはいけないことくらい分かっている

それに、庵の方が断然いい男だ

じゃなきゃ私がペラペラと内情を話せるわけがない

この人には、頼ってしまう


私どれだけ情けないのよ・・・・・


「いつも、ごめんね」


嘘だよ。ありがと


2つの言葉を囁いて、少しなりともスッキリさせる

こうでもしなきゃ、屋上の扉なんて開けられない



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