今日で終わりにしてくれますか




私の存在なんてものはもう、アイツの中ではないのではないだろうか

無意識のうちに握りしめた手に力を込めた

握り返してくれる彼の優しさが、醜い私には痛い

痛い

優しさに触れられないだなんて、どんな化け物だ


感情に蓋をしてしまった私には、素直に触れることの出来なくなってしまったものだった

どれだけ馬鹿なんだろう

そこまでして颯人の近くでいる価値なんて、あるの・・・・・?


「紅鈴」

「・・・・・」


答えは確かにノーだ

隣から聞こえる呟きに無言でうなずいて、情事を終わらせて間もない彼らに近づく

その間、繋いでいたはずの手は離れていて、伝わらないぬくもりがなんとなく寂しかった

この男に、浮気されることよりも


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