今日で終わりにしてくれますか
まるで透明人間かのように屋上のドアで待ってくれている庵の元へ急ごうと足を速めるも、裾を掴まれて思うように動けない
「何か、まだ用ですか」
「名前」
「呼ぶ必要もないですよね」
私1人が呼ばなくたって、アンタには呼んでくれる人がわんさかいるじゃない
「紅鈴、それ可愛い」
「・・・・そう」
いらない。いらないよ
そんなお世辞、もう聞き飽きたから
ふにゃりと頬を緩めて嬉しそうに笑う姿は、私にとってもう何の価値もない
騙されないよ
もう、騙されたフリだってしないから
だから、離して
「橘くん」
また、コイツが好きだと実感する私が嫌い