今日で終わりにしてくれますか




ふわりと香るシトラスの中に、勢いよく抱きこまれる

優しい手の持ち主の胸は、やっぱり温かかった


ここまでしてくれなくても、いいのに

私、なんかに


「紅鈴、泣け」

「何言ってんの。はやく、行こうよ」

「泣けよ」

「いおりー?」


頑なに私を泣かせようとする庵に、牽制を兼ねた声を掛ける


これ以上、貴方に頼りたくないんだよ

いま、私がそれを許してしまったら確実に庵に甘えて、依存してしまうのが分かっているんだ


だからさあ、この腕、解いてよ

ねぇ





「なか、ない」

「・・・・それは橘のためか?」


彼と同じように頑として譲らない私に痺れを切らしたのか、次の質問を投げかける



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