今日で終わりにしてくれますか
何もかも投げ出せれたら楽なのに
「もう、嫌だ・・・・」
「本当に?」
白と灰色の世界に突然入り込んだ誰かの顔
「・・・・・え」
笑みと共に、その人が持っていたであろう傘が上半身を覆う。頭上から、見知らぬ少し高めの低い声が聞こえた
「本当に、君は今が嫌になったの?」
静かに声を落とす。グルグルと巻かれているマフラーの隙間から、かろうじて顔が見えた
・・・・誰だろう、この人
甘い容姿をしているのに、瞳の奥がとても冷たくて、まるで世界に絶望したかのような色を見せていた
それでも反対に、垣間見える慈悲の感情が、この人を生かせているんだと感じた
だからこそこの声が、
「嫌になったの」
「へぇ、なら」
私にとって、毒のようなものになるのだと分かっていたのに
落ち着いた口調で、私に向かって話しだす。分かっているのだとしても、全てがどうでもよくなっていた私には、逃げるなんて選択肢は無くなっていて
ただ落ち着けるこの声を聞くことで、閉じた世界に対して案著していた
このとき逃げていたら、私とこの人
―――――――――――――颯人は、こんな悲惨な結果を辿らなくて済んだのではないかと今でも思っている
たとえ、どうやっても変わらない運命なのだとしても
だってそうとしか、思えないから