今日で終わりにしてくれますか

彼の渇望








まだまだ雪は止まない。それでも私には、傘を差してくれる人が出来たようで

この人の存在に救われているんだろうな、とは分かっているものの、八割方理解して、それ以上考えることを止めてしまった


逃げて、いるのだろうか


一体ナニに?





「・・・・橘くん」


出会った彼はとても聞き上手で優しくて、とても、寂しい人だった。纏っている空気がいつも曖昧でふわふわしていて、すぐにでもいなくなってしまいそう


今日もまた、横にいる彼が本当に存在しているか気になって、声をかけた


「なぁに、アカリちゃん」


優しげに微笑む彼は、私によく似ていた。だからだろう。私が、彼といる時間が長いのは


あれから1ヶ月。今も私は、この人に会いに来ている。あの日出会った約束の場所で


あの日から私は現実を見ていない。見ていないという言い方はおかしいけれど、少し現実から逃げる癖がついた


そして、逃げることへの罪悪感が胸の中でいっぱいになったときに、ここへ来るようになった。彼がいても、いなくても



それなのに何故か、彼はいつも此処にいる

最近はそれが不思議でたまらない


例にならって、今日も考える。私は、彼に私の時間を与えることが出来ているのだろうかと



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