今日で終わりにしてくれますか




こんなに最低な私なのに、真剣に聞いてくれる百合亜。相変わらず優しい彼女に、笑みを零した


「たくさんの人からの視線が、怖くて。この間ね、公園に逃げたの。そしたら」


そしたらね、


「男の子に、会って」


橘くんに出会って、私は私の時間を差し出した

それはまるで、悪魔に魂を売るかのような、等価交換の関係。何とも言えない関係の上、成り立った出会い


他人から見たらとても歪な、関係だ


口にだした途端、今更、それに気づいた。そう言ったら、橘くんは笑うだろうか。アカリちゃんらしいねって

それとも、終わりにしようかと微笑むのだろうか


『アカリちゃん』


一瞬でも、それが怖く感じた私は、一体何なんだろう



「紅鈴、その人の名前」


─────教えてくれない?



百合亜の声が震えていたことも、その言葉の意味も、自分のことで手一杯な私は、何一つ知らなかった


「・・・・え、何で?」

「あたしだって、紅鈴がお世話になってる人くらい知りたいわよ。悪い?」

「え、あ、そうじゃないけど。珍しいなって」


百合亜が聞いてくるなんて思ってもなかった。この件に関して、踏み込まないとばかり思っていたのに


「あたしだって、紅鈴が大事なの。心配くらいさせてよ」

「百合亜、」


あたしよりソイツを取ったんだから、どんな人か見て見たくもなるわ


拗ねた様な言葉が、純粋に嬉しかった


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