今日で終わりにしてくれますか
彼女よりも彼
「紅鈴」
「ね、紅鈴、デートしよ!」
「紅鈴大好きぃ」
冬が終わった三月、今まで以上にたち、颯人が喋るようになった。そう言うとかなり語弊がある
なんていうか、今まで以上に私に甘くなった
全体的に、甘いのだ。声とか仕草とか、私の扱いとか
付き合ったことがないから、よく分からないけれど。それでも、文字通り颯人が私を大事にしてくれていることだけは、理解出来た
彼が人間を好きで、だけど理解が出来ない人だと言うことを私は聞いた。だから余計に、私に甘いんじゃないのかな
本当にそれは、恋心から出来た感情なのか
その台詞だけは、どうしても本人に聞くことができなかった
それは、刷り込みというやつではないのか。貴方は何か、勘違いしているのではないの?
ずっとずっと、奥底に沈んでいた感情
だけどそれを口に出さないまま、私は穏やかに、白い季節を越そうとしていた
私は何一つ、日常の彼を知らないんだ、ということに暫くしてから、始めて気づいた
「紅鈴ちゃん、次の数学さぁ、宿題出てたっけ?」
「へ?あー、出てたと思うよ」
「ありがとー!」
教室でひとり、ぼんやりと過ごす。白い空を横目に見ながら溜息を吐いて、この感情をやり過ごした