今日で終わりにしてくれますか




『主人公は何故そう思ったのか』


そんなこと問われても、と考えるのが日常で。だから私は、文章を読むことも嫌いだったりする


「穂束、書き終わったか?」

「はい。今行きます」


椅子を後ろへ下げて、席を立つ。ノートを持って黒板への道を歩きながら、答えがあっているかどうかを考えていた


将来、数学なんて役に立たないし

そんな言葉を、クラスの中でも明るい女の子が言っていた気がする。それと同じで、国語なんて何の役に立つのかって言いたいときがある

けれど、所詮は全部同じで。結局どれを取っても大事なのだろう


例えば、今の私みたいに、自分の感情が分からなかったり、相手の感情が読めなかったり。ふとしたとき、欲する情報を手に入れるために、それは武器になるのではないだろうか


難しい言葉でなぞったって、言いたいことは結局


「よし、穂束。書き終わったな。じゃあこの問題の解説にいくぞ」


颯人のことしか考えてないってことだ


先生の言葉を頭にいれて、ノートの上からシャーペンを拾い上げる。板書を取って、授業を聞いていても、今日の私はずっと、彼のことだけを考えていた


「(今日、会いに行こっかなぁ・・・・)」


それくらい侵食されてるんだってこと、彼は気づいているのだろうか



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