今日で終わりにしてくれますか









───────





『紅鈴、ホントにごめん!!!!』


最近、本当に時々だけど、颯人と会えない時間が多くなった。手を合わせながら私に向かって謝る颯人は、まだ記憶に新しい


用事があるのに、忙しそうなのに。それでも私に会おうとするから、何で?と問いかけると、颯人は決まって言う



“紅鈴に会いたいから”って


私の質問に不思議そうな顔をして、にっこり笑って伝えてくれる。そんな颯人にひっそりと安心して、まだまだ伝えることが出来ない想いを温めて


それでも、ふと思う。会いたいって、どういう意味で?


彼の好意を疑っているわけではない。だけど思ってしまうときがある。彼の行動すべてに、違う感情があるんじゃないかって


例えば彼が無意識にしているだけで、私への好意の色はただの親愛で。会いたいという言葉だって、親の愛に包まれるような案著に浸りたいからじゃないのかと


馬鹿らしいことだけど、考えてしまうのだ


疑いたくないのに、全てに疑いを掛けてしまいたくなるときがある。だって私は、彼のことを何も知らないのだから


聞くことすら出来ていないのだから


怖がって前に進めないのなら、する意味がないと言うのに。馬鹿な、なんて馬鹿なことを


< 272 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop