今日で終わりにしてくれますか
不意に、ゆっくりと彼女の動きが止まる。まるで両脚に重りが付いているかのように、ズルズルとそれを引きずるかのように重たい足取りになっていた
「紅鈴、」
百合亜の暗い表情と声の意味が、私には分からない。いつもと反対の作業をして彼女を見るということが、私に焦りをもたらした
「ねぇ紅鈴、『公園であってる男の子』の名前をもう一度教えてくれる?」
「え…?」
公園であってる男の子?
頭の中でパッと浮かんだ答えに、疑問が過る。百合亜にそこまで教えたっけ…?
「百合亜、私、そんなこと言ったっけ…」
「ああ、ごめん」
さも普通に間違えたかのように、すぐさま返される返事。百合亜が静かに俯く。窓から差し込んできた夕陽が、そのオレンジが、私達を一瞬だけ強く照らす
「そうじゃなかった」
視界が眩むほどの光に、眩暈がしそうだ
「最近仲良くなったっていう、他校の男の子の名前、教えて?」
今だけ、この場所がとても怖い
「…なんで」
「もしかしたらそうかもしれないって話を聞いたから」
そうかもしれない話って何?
百合亜の表情が真剣な、だけど何処か強張って行っている気がする。こんな顔をする彼女を見たことがない。声を震わせて、真っ青にする彼女を見たことがない