今日で終わりにしてくれますか




しばらく茫然と彼女の消えた方向を眺めていると、百合亜に腕を引っ張られながら衣装班の元へと歩かされた

いつも思うけど百合亜さん、私の扱い酷くないですか


「紅鈴、手、動かして」


はい。

ぶすっとしながら百合亜を睨んでいたことに気づかれたのか、受け取った布に貫通するくらい力強く針を刺された

怖いよ

この人絶対私が怪我することなんて気にしてないよ

おかげで指先が震えてるよ

その視線から逃げるようにチクチクと布を縫い始めた


「ねぇ、百合亜さあ」

「さっき花崎さん来てなかった?」

「え、うそぉ!アレでしょ?」


”颯人の浮気相手”


遮られるようにして耳に入ってきた高い声に視線を這わせた

近くにいたクラスメイトが漏らした言葉に、その子を見ながら目を細める

なんだ。知ってる人、いたんだ



―――颯人が浮気してるって――


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