ENDLESS LOVE MAZE
『僕の過去を、話そうか』
ぽたりと垂れる血が膝に落ちる。
生暖かい感触が、ゆっくりと流れていった。
『僕はね、僕が覚えてる、一番古い記憶は、両親の顔なんだ』
『おとうさん、おかあさんの顔?』
『そう。・・・・・・両親のね』
要は冷静に、小さいナイフを畳んだ。
私の切れた手首を掴んで、痛いほど力強く握る。
手の感覚が無くなって、次第に血が落ちなくなってきた。
『なんで、一番古い記憶なの・・・・?要のお父さんとお母さんは、今でもいるのに』
要はいつもの優しい顔で、私に笑いかけた。
『自分が何歳かも分からないくらい、小さい時。立つことがやっとなくらい、小さい時。
僕ははっきり覚えてるんだ』
要の深い瞳に吸い込まれるようにして、私は聞き入った。
『両親が、大きい荷物を持って、僕に背中を向ける。途中、女の人が少しだけ振り返って、何かを言いながら、僕に手を振るんだ』
ずきり、と心の奥が痛くなってきた気がした。
要の声が、ずしりと重く感じる。