ENDLESS LOVE MAZE
「要が帰ってくる前に、帰りたいの。」
「そう。それならこのドアを開けて、俺が用意した服を着ればいいじゃん」
向こう側で妖しく笑っているだろう、千崎はドアノブを回した。
慌ててそのノブを掴む。
「・・・・・・まさか紳士な千崎さんが、レディの覗きなんて下品なことしないですよね」
「なにがレディだよ。まだ十六のくせに」
私を手の平の上で転がして遊んでいるような、口ぶり。
少し腹が立って、私は声を少し高くして、続けた。
「・・・・・分かったわ、じゃあ、そっちに行くから貴方はどこかに行ってくれる?」
「それでいいの?」
「あなたが居ないなら!」
時間が迫ってきたし、これしかない。
向こう側で物音がしなくなってから、私は扉を押し開けた。
見た感じ、誰もいない。
よし、よかった。
「ふふ、案外簡単だよね、梓ちゃん」
目の前が真っ暗になる。
長い指が、私の視界を邪魔するんだ。
「せん、ざき・・・・・?!」
「あんなに賢そうなのに、学習能力はそこそこって所だね」
目にまとわりつく手を払って、上を見上げる。
にこりと笑う千崎が居た。