ENDLESS LOVE MAZE


「要が帰ってくる前に、帰りたいの。」

「そう。それならこのドアを開けて、俺が用意した服を着ればいいじゃん」


向こう側で妖しく笑っているだろう、千崎はドアノブを回した。

慌ててそのノブを掴む。


「・・・・・・まさか紳士な千崎さんが、レディの覗きなんて下品なことしないですよね」

「なにがレディだよ。まだ十六のくせに」


私を手の平の上で転がして遊んでいるような、口ぶり。

少し腹が立って、私は声を少し高くして、続けた。


「・・・・・分かったわ、じゃあ、そっちに行くから貴方はどこかに行ってくれる?」

「それでいいの?」

「あなたが居ないなら!」


時間が迫ってきたし、これしかない。

向こう側で物音がしなくなってから、私は扉を押し開けた。


見た感じ、誰もいない。

よし、よかった。


「ふふ、案外簡単だよね、梓ちゃん」


目の前が真っ暗になる。

長い指が、私の視界を邪魔するんだ。


「せん、ざき・・・・・?!」

「あんなに賢そうなのに、学習能力はそこそこって所だね」


目にまとわりつく手を払って、上を見上げる。

にこりと笑う千崎が居た。



< 96 / 125 >

この作品をシェア

pagetop