ENDLESS LOVE MAZE
千崎は私の後ろに回って、まだ濡れたままの髪にドライヤーの風を当てた。
細い指が私の髪を梳く。
「梓ちゃんの髪はきれいだね」
「普通よ」
「まだ毛染めしたことないよね?あまり痛んでない」
千崎は入念に私の髪をチェックしながら、ドライヤーで乾かす。
そう言うところは仕事柄なのだろう。
「髪、染めないの?」
「えぇ。染める必要なんてないわ」
「イメチェンもいいんじゃない?」
良く喋る男だ。
さっきから絶やさず口を開いている。
早く、この場から去りたいのに。
優しく撫でられる感触に、目を閉じた。
「こうして黙ってると、かわいいのに」
「失礼ね」
後ろで千崎が笑う声がする。
一言一言余分なんだ、こいつは。
「うん、乾いた」
千崎がドライヤーを止めた。
閉じていた目を開く。
千崎がまだ髪を触っていた。