ENDLESS LOVE MAZE


千崎は私の後ろに回って、まだ濡れたままの髪にドライヤーの風を当てた。

細い指が私の髪を梳く。


「梓ちゃんの髪はきれいだね」

「普通よ」

「まだ毛染めしたことないよね?あまり痛んでない」


千崎は入念に私の髪をチェックしながら、ドライヤーで乾かす。

そう言うところは仕事柄なのだろう。


「髪、染めないの?」

「えぇ。染める必要なんてないわ」

「イメチェンもいいんじゃない?」


良く喋る男だ。

さっきから絶やさず口を開いている。

早く、この場から去りたいのに。


優しく撫でられる感触に、目を閉じた。


「こうして黙ってると、かわいいのに」

「失礼ね」


後ろで千崎が笑う声がする。

一言一言余分なんだ、こいつは。



「うん、乾いた」


千崎がドライヤーを止めた。

閉じていた目を開く。


千崎がまだ髪を触っていた。



< 98 / 125 >

この作品をシェア

pagetop