あの日の雨は
あの日雨は泣いていた
僕は透明のビニール傘を滑り落ちる雫を見つめていた


色の変わった道路。嫌いだった自分を上書きするかのように色を変えていた


一番強い真っ黒に変わった道路の上に派手な赤い靴がピタリと僕の前で止まった


この靴は、確かクラスメイトの……
名前、わかんないな


ソイツは帰らないのか?と聞いてきた


体が帰る場所はある。だけど心までは帰れない


僕は横に首を振った。
小さな水たまりに泣きそうな顔の男の子が映った

泣くなら僕だ。
帰る場所が、生きる場所が消えた。 でも涙が、雨と一緒に流れてはくれなくて……


だけど
あの日、雨は泣いていた
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