もしも声をかけていたら
もしも声をかけていたら
今年4月から高校生になった俺は、電車通学になった。
その時に駅のホームで出会ったんだ、彼女と。
俺の横にはいつも、ストレートの長い髪の女子高生が立っていた。
どこか寂しげな顔をして、いつも空を見ている彼女。
俺はいつしか、そんな彼女と話したいって思うようになった。
一目惚れしたんだ。
1ヶ月過ぎてようやく決意した俺は、彼女に話しかけようと息を飲んだ。
『まもなく2番線乗り場に電車が入ります――』
アナウンスが流れる。
もうすぐ電車が来る。
早く話しかけないと……!
俺が拳を握りしめたと同時に、彼女は前に向かって走り出した。
ホームには電車のブレーキの音と悲鳴が聞こえた。
そして、彼女の血が飛び散った。
彼女は俺の目の前で死んだ。
もし、もしも俺が彼女にもっと早く声をかけていたら、彼女は自殺しなくて済んだのだろうか。
――完――。