【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐
「あ…何?」
ハッと我に返り、いつもみたいに笑う。
「…先輩は、今でもたくさんの女の子と仲が良いんですよね」
「あー…、うん、まぁそれなりにね」
「…昔と、全然変わってないんですね」
……変わってない、か。
でも確かにその通り。俺は昔から何も変わってない。
「これが俺だから。
そうじゃなきゃ、“らしくない”っしょ?」
…そう、これが俺。
ずっとこんな風に生きてきて、そしてこれからも同じように生きていくんだ。
「…先輩って昔から、無理してる」
「…無理してる?俺が?」
「無理矢理作った自分を一生懸命演じてる。
私は、そんな風に思います」
ドキ
綾ちゃんの言葉に、体が硬直して声が出せなくなる。
…なんで綾ちゃんは、俺が“俺”を作ってることを…。
「…体育館裏で初めて先輩を見た時、“寂しそうな人だな”って思いました。
でも誰かが近づくとすぐ笑顔になって、馬鹿みたいなことで相手を笑わせて…。
…それを見た時、“あぁこの人はこういう人なんだ”ってわかりました。
誰に対しても笑顔で、私に対しても笑顔…。
無理矢理に自分を作って、そのキャラを演じて、居場所を作って…。
“私と同じなんだ”って、最初から思ってました」
……綾ちゃんと、同じ…?