【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐
「…龍輝の女に手ぇ出したら殺されるぞ?」
山ちゃんの真剣な瞳が俺をとらえる。
「手ぇ出したことなんてねぇよ」
…いや、ギリギリあったかも?
セーブしてきたつもりだけど、よくわかんないや。
「…しっかしお前が、龍輝の女をねぇ…」
「あ、山ちゃん。みんなには言うなよ?
誰にも言ったことないんだから、言ったら殺すよ?」
「こんな話言えるかよ…龍輝に知られたらこえーわ。
つーか、言っても誰も信じないんじゃね?
“桜庭 大雅は遊び人”で有名だから、一人の女を想うようなキャラじゃない」
…あはは、やっぱり俺ってそういうキャラに見られてるんだ?
まぁ否定はしないけど。
「…ねぇ山ちゃん、いつもの“俺”ってどんな感じに見える?」
「チャラ男」
「うっわ即答きたー…。
んじゃあさ、それって俺の素だと思う?」
……って、なんでこんなこと聞いてんだろうなぁ…。
“無理矢理作った自分を一生懸命演じてる。”
…あの子の言葉が気になってるせいだよな、きっと。
「お前のソレが素だったら、俺はお前と一緒に居ねーよ」
「…へ?」