【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐
「朝から晩までチャラチャラしてたら見てるこっちが疲れるわ。
お前はそういうキャラ。と思って付き合ってるよ」
「………」
「だいたいさぁ、人間なんてある程度“自分”を作って生活してんだろ。
まぁ龍輝はいつでも素で生活してそうだけど。
でも普通はさ、ありのままの自分なんて見せねーから。
俺だって普段ちゃらんぽらんしてるけど、今はこうやって真面目に話してるわけだし?
って、自分のことをちゃらんぽらんとか何言ってんだ俺。
まぁとにかく、人間なんていろんな顔持ってんのが当たり前だろ?
普段のお前はチャラ男、普段の俺はちゃらんぽらん。
でも、ほんとは違うし、わかる奴にはそれがわかる」
……わかる奴にはわかる、か…。
「…綾ちゃんには“ほんとの俺”がわかってたから、だからあの時あんな風に…」
「何、まだなんかエピソードあんの?」
「…あ、いや、別に…」
「ここまで話しといて隠すとか無いっしょー。
ほら若者よ、さっさと白状せい」
…って、お前は俺と同い年だろーが。
んー…、山ちゃんって、龍輝と同じくらい馬鹿だよなぁ…。
…でも確かに、「ここまで話した」のは山ちゃんだけなんだよな。
それに山ちゃん、意外と真面目に聞いてくれてる。
馬鹿だけど、でも、良い奴なんだよなぁ。
「…龍輝と朔ちゃんには、言うなよ?」
「健吾には?」
「あぁあの人は常に蚊帳の外だから、言っても意味わかんないと思う」
「うっわ冷てー。
健吾って可哀想な奴だなー」
「まぁそれが健ちゃんだから」
「あはは、“健吾のキャラ”か」
「うん」
あははっ、と二人で笑い合い、二人で空を見上げる。
そしてゆっくりと、昨日の話を山ちゃんにし始めた。