【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐
――…昨日、あの子とファミレスに行って、「無理矢理作った自分を一生懸命演じてる」と言われて、
あの子はそれを「自分と同じ」と言って、それに俺が応える前に龍輝たちが来て…、
…そしてあの子と朔ちゃんは何故か知り合いで、朔ちゃんはすげー優しそうな顔であの子を見て、
あの子も顔を真っ赤にして照れてて…、それを見てるのがなんとなく嫌で、俺は一人でファミレスを出た。
「…で、一人で歩いてた時にあの子から電話が来て、“朔也さんと私は何もありませんから”とか言われた」
「うは、それってお前、あの子はお前が好きなんじゃん」
「…うん、“桜庭先輩が好き”って言われた。
でも信じられるわけないじゃん。
あの子はずっと俺を嫌ってたんだよ?
体育館裏に居る俺にさ?“早くどっか行け”って毎日言って、毎日嫌そうな顔してたのにどうしてそれが“好き”になるわけ?
…朔ちゃんと話してた時の、めっちゃ恥ずかしそうにしてたのはなんなの?
どう見たって俺じゃなくて朔ちゃんにラブじゃん」
…そうだよ。
俺のことを好きになるなんて、そんなの、あるわけがない。
「好きな奴の前じゃあ素直になれないとかよく聞くじゃん。
当時のあの子はそれだったってことだろ?」
「…なんだよそれ」
「なんだよ、って、お前なぁ…今のお前だってそうだろ?
龍輝の彼女が好きなのにそれをこれっぽっちも見せないのは、形は違うかもしれねーけどあの子と一緒だろ」
……一緒。
今の俺は、中学時代のあの子とおんなじ…?