【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐
砂利に足を取られて転んで、カゴいっぱいに入ってたボール全部が散らばって。
部活が始まる前だったから、運んでた子たちみんなが慌てて拾ってて、
カゴをひっくり返した本人は足から血を出して、泣きそうな顔してて。
…そんなの見たら、放っとけないよなぁー。
「…でさぁ、その子たちと一緒にボール拾って、そのあとにその子を保健室まで連れてったんだよね」
「もちろんお姫様抱っこ?」
「んや、普通に手ぇ引っ張った気がする」
「うっわ勿体ねぇー。
お姫様抱っことか、おぶっていくとかさぁ、もっと密着しろよー」
…あはは。
山ちゃんは結局、中学生と触れ合いたいだけじゃん。
ほんと、馬鹿だなぁ。
「そんで?その子が例のあの子だったーとかいうオチ?」
「いや、アレは…――」
――…あれ?
あの時、血ぃ出してた子って…。
「何、やっぱりあの子だったの?」
「…いや、違うと思うけど…」
「けど?」
……なんか、引っ掛かるんだよな…。
なんだこれ?
サクライ アヤって名前を聞いた時とおんなじ…妙な感覚が体を包む。