リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『懐き系』・1
「一時間ぐらいね。でも図書館で勉強してたから」

高校と中学では授業の時間も違う。

だから彼に待ってもらうことは、ほぼ毎日。

けれど文句一つ言わず、ちゃんと待っていてくれる。

「じゃあ行こうか」

少年は朝のように手を握って歩き出す。

人目があるけれど、気にしていないのか、それとも見せつけたいのか。

「今日は調理実習でクッキー作ったんだ。おねーさん、甘い物好きだよね?」

「うん、まあ…」

「じゃあおねーさんの部屋で一緒に食べよう?」

無邪気な笑顔が、心に突き刺さる…。

「うっうん…」

そして手を繋いだまま、わたしの家に到着。

一軒家の家には、昼間は誰もいない。

両親はスーパーを経営している為、二人で朝から仕事に出掛ける。

兄は大学、姉はバイト。

下に兄弟がいないせいで、少年には甘いのかもしれない。

少年を家に入れるのも、もう何度目か分からない。

玄関の鍵を開けると、少年は慣れたように靴を脱いで、二階のわたしの部屋へと向かう。
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