目が覚めると7人の男が側にいました。



ゆらゆらと歩を進めテーブルの前に立つと、そこには隙間なく並べられたたくさんの料理。



「ほらっ亜子ちゃんはここ!」



ぼうっとその量に目を奪われていると、ソラが自分の隣の椅子を叩きながら言った。



―――あたしが退院して今日で3日。


相変わらず何にも思い出すことはできなくて、



「ちょ、ジン!それ俺のだろっ」


「うっせー!お前のもんは俺んだ!」


「…ったく、まだあるからお前ら暴れんじゃねーよー」



あたしが記憶をなくす前からあった、この騒がしい毎日もなんとなくだけど慣れて来た。



「どー?おいしー?」



目の前にいたキョウが少しのぞき込みあたしに問う。


エプロンをつけてまるで主夫のようなその姿に少しおかしくなって、「うん、おいしい」そう笑うと、同じように柔らかい笑顔になる。


どうやら器用らしいキョウは、神田家の腕利きシェフらしい。



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