目が覚めると7人の男が側にいました。
神田剛(ゴウ)
病院で目覚めた日の夜。
その人は目を真っ赤にしながら、自分をお父さんだと名乗りあたしを抱きしめた。
お母さんは9年前に病気で亡くなったらしい。
まだお父さんを“お父さん”と呼ぶのは少し慣れないけれど。
「やっぱ亜子は可愛いなぁ」
「おーい親父、遅刻すんぞー?」
「うわ、もうこんな時間!?京、弁当は?」
「はいよー」
「じゃな、亜子。学校頑張れよー」
この家唯一の娘のあたしには、どうやら甘いらしい。
ぷらぷらと手を振りながら見送っていると、入れ替わりのようにサクヤが入って来た。
「……よぉ」
そう言って、ポケットに手を突っ込みながらダルそうに歩く。
隣に住んでる幼なじみだって言っても、この男に関してはもう家族みたいだ。
自由に出入りしていても、誰もなにも驚かない。
ご飯だって夜はほとんど神田家で済ませているようだし。
世の中の幼なじみってものは全員こんな感じなんだろうか?