咲き舞う華は刻に散る
そして、今も――。
「気安く名前を呼ばないでくださる?」
小夜は口元に着物の裾を当て、怪訝そうに顔を歪めた。
「緋い瞳に藍色の髪…、本当に醜いわね」
美桜里の従姉妹にあたる小夜は彼女の姿を醜いと言う。
理由は――。
「この鬼の子め…」
そう、美桜里は鬼と人間の間に生まれた混血だ。
鬼である父、蘭(アララギ)の血を濃く引き継いだ美桜里は鬼の証である藍色の髪も緋い瞳も継いでいる。
しかし、鬼と言っても、ツノも普段は隠れ、見た目は人間と変わらない。
ただ、瞳の色が緋色で髪の毛が藍色と人間とは異なるだけだった。