咲き舞う華は刻に散る
2.
美桜里は夢を見ていた。
家族四人で幸せに暮らしていたあの頃の夢を――。
美桜里は桜の木の下で居眠りをしていた。
「美桜里」
自分を呼ぶ母の優しい声。
その声を誘われるように、美桜里はそっと目を開けた。
目の前には死んだはずの両親が、優しい笑みを浮かべながら立っていた。
母――、黎は天女のように綺麗な顔に笑みを湛え、父――、蘭は緋い瞳を細め、愛おしそうに美桜里を見ている。
「父様…、母様…?」
夢でももう一度、両親に会えた――。
それが嬉しくて、美桜里は涙が出そうになった。