咲き舞う華は刻に散る
「美桜里?」
まだ寝ぼけているのか、目は虚ろだ。
土方が名前を呼ぶと、美桜里はこちらを向いた。
すると、彼女の緋い瞳は大きく見開かれる。
その瞬間――。
美桜里は土方に掴み掛かり、押し倒した。
そして、無防備な土方の首に彼女の手がかけられ、首を絞め始めた。
「ぐ…っ」
彼女の細い指が徐々に土方の首に食い込んで行く。
土方は美桜里の手を掴み、己の首から引き離そうとした。
しかし、びくともしない。
細い身体の何処にこんな力が宿っているのかと疑問に思った。
「私は要らない存在なんだ…。
人間でも鬼でもないから…」
細く弱々しい声が土方の耳に届いた。
彼女の顔は今にも泣きそうな程歪み、正気ではなかった。