咲き舞う華は刻に散る
3.
翌日。
美桜里は二日酔いにもならず、平静と隊務を行っていた。
しかし、隊務と言っても土方に茶を出したり、稽古に付き合うくらいで特にすることがない。
暇になった(年中暇だが)美桜里は、泉羽と縁側にいた。
泉羽が入れて来た茶を飲みながら、生前の桐生のことを話した。
「泉羽にとって、兄様はどんな存在だった?」
「桐生様は優しいお方でした。忍びである私にも優しくしてくださいました」
桐生のことを話す泉羽はまるで恋する乙女のようだ。
もしかしたら、泉羽は桐生に忠誠に似た淡い恋心を抱いていたのかもしれない。
だとしたら、美桜里は忠誠を誓っていた主の仇。
彼女にとって、美桜里に仕えるのは酷ではないか?
そう感じた美桜里は自然と声が暗くなった。