咲き舞う華は刻に散る
そう踏んだ美桜里は――。
「済まない、今夜は無理だ。私は無理だが…、泉羽」
「は!」
名を呼ぶと、何処からともなく泉羽が美桜里の横に現れる。
「お呼びでしょうか?」
「ああ。今夜、伊東さんと呑みに行って来い。私が行きたいのだが、生憎都合が悪くてな」
「分かりました」
「伊東さんも構わないな?」
「ええ。私も泉羽さんとお話してみたかったの」
伊東はじっと泉羽を見つめている。
泉羽は綺麗な容姿をしている。
おそらく、伊東も気に入っていたのだろう。
そんな伊東の気持ち悪い視線に泉羽は悪寒が走ったらしく、ぶるりと身体を震わせた。
「では、夕刻にお迎えに上がりますわ」
そう言い残し、伊東は上機嫌で去って行った。