咲き舞う華は刻に散る
「泉羽」
伊東がいなくなったのを確認すると、美桜里は泉羽を近くに呼んだ。
「はい」
「今夜の接待、あの男が何を考えているのか探れ。奴は何か企んでる」
「御意」
泉羽は凛とした返事をしたが、突然顔をげんなりと歪めた。
「私、行かないと駄目ですか?」
どうやら、泉羽も伊東のことを好んでいないらしい。
泉羽には悪いが…。
「駄目だ。行ったら、褒美をやるから我慢してくれ」
「分かりました!」
褒美という言葉に泉羽が嬉々とした。
おいおい、忍びがそれで良いのか?
美桜里はコロコロと表情が変わる忍びに心の中で突っ込んだ。
泉羽の印象がだいぶ変わった気がする。
最初はもっとキリッとしてたのに、美桜里に仕えるようになってからは表情が百面相になる。
しかし、ひとたび任務になれば、忍びらしく気高かった。