咲き舞う華は刻に散る


「私はお前に礼を言われるようなことはしてないぞ。言う奴らを間違ってるんじゃないか?」



美桜里は藤堂が眠っている墓に向かって声をかける。



しかし、当たり前のことだが、返事は帰って来ることはない。



すると、美桜里の白い頬に一筋の涙が伝った。



「馬鹿藤堂…。ありがとうなんて、私はもったいないよ…」



美桜里はその場に膝をつき、彼が眠る墓に触れた。



美桜里は彼の明るい笑顔に助けられていた。



「私こそありがとう、藤堂…」



墓石をゆっくりと撫で、溢れて来る涙を余所に笑みを浮かべる。



さよなら、藤堂…。



静かに安らかに眠って。



そう願いながら――。






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