咲き舞う華は刻に散る


そんなある日。



美桜里は新選組の隊旗を膝に乗せ、砲撃の跡が残る野原に座り込み、笛を吹いていた。



榎本と大鳥の命令で投降はせず、彼女だけ箱館に残っていた。



彼が死んでから一つ気付いたことがある。



それは――。



「私は土方が好きだったんだ…」



笛を吹くのを止め、隊旗を見た。



好きな人を失ってから気付くなんて、遅すぎた。



もっと早く気付いていれば、もしかしたら、土方は…。



「何故、もっと早く気付かなかったんだよ…」



美桜里の目から涙が溢れた。





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