彼女の残したもの・・・
「お客さん、ここだと思うよ」
その一階の角部屋には柱に紙にマジックインキで『藤川』と書かれた表札が、画ビョウで留められていた。
呼び鈴も無いので、ドアをノックしてみると、すぐに中から、しゃがれた女の声で返事があった。
「すみません、杉山と申しますが」
ドアが少しだけ開き、「あ〜シンゴさんね、杉山慎吾さん」
出てきた老女は、白髪頭で、顔には深い皺が刻まれていたが、真っ赤な口紅を差しているちょっと、下びた女だった。
「遠いとこ綾乃の為にありがとさんねぇ」
彼女は、あやのの母親だと言い、僕を散らかり放題散らかった部屋の奥の四畳半に招き入れてくれた。
そこには仏壇は無く、小さなみかん箱を横にしたものに、これまた小さな位牌が置いてあるだけだった。
僕は持ってきた線香に火を点け、手を合わせた。
そして振り返り、あやのの母と名乗る女に訊いてみた、
「綾乃さんの最後は・・・」
そこまで言いかけた時、女が言葉を遮り、
「馬鹿な娘だよ。まだまだ稼げたのに・・・」
涙声で「あんたタバコはあるかい?」といい、僕がタバコを差し出すと、中から3、4本抜き出し、1本に火を点けた。
線香と煙草の煙が混ざり、僕は気分が悪くなり、早々にそこを後にした。
その一階の角部屋には柱に紙にマジックインキで『藤川』と書かれた表札が、画ビョウで留められていた。
呼び鈴も無いので、ドアをノックしてみると、すぐに中から、しゃがれた女の声で返事があった。
「すみません、杉山と申しますが」
ドアが少しだけ開き、「あ〜シンゴさんね、杉山慎吾さん」
出てきた老女は、白髪頭で、顔には深い皺が刻まれていたが、真っ赤な口紅を差しているちょっと、下びた女だった。
「遠いとこ綾乃の為にありがとさんねぇ」
彼女は、あやのの母親だと言い、僕を散らかり放題散らかった部屋の奥の四畳半に招き入れてくれた。
そこには仏壇は無く、小さなみかん箱を横にしたものに、これまた小さな位牌が置いてあるだけだった。
僕は持ってきた線香に火を点け、手を合わせた。
そして振り返り、あやのの母と名乗る女に訊いてみた、
「綾乃さんの最後は・・・」
そこまで言いかけた時、女が言葉を遮り、
「馬鹿な娘だよ。まだまだ稼げたのに・・・」
涙声で「あんたタバコはあるかい?」といい、僕がタバコを差し出すと、中から3、4本抜き出し、1本に火を点けた。
線香と煙草の煙が混ざり、僕は気分が悪くなり、早々にそこを後にした。