彼女の残したもの・・・
第7章 夜更けの雨
店を出て、先輩と近くの焼き肉屋で食事を済ませ、ご機嫌な先輩と別れた。

約束の時間は店が終わる午前0時過ぎ。
まだ1時間以上あったが、僕はどこにも行く気になれず、八幡神社の階段にポツリと座っていた。

この八幡様は子供の頃、あやのたちと良く遊んだ場所だった。

あの頃と比べると、階段も、上の見える鳥居もすごく小さく見える。
そう言えば昔、ユウやブーちゃんが帰ってしまい、あやのと二人で境内のアリの巣を見ていたことがあったっけ・・・
大粒の雨が突然降り出して、僕らは神社の軒下で雨宿りをしていた・・・
雨で濡れたあやののワンピースから、少し膨らみかけた小さな胸が透けて、僕はドキッとしてしまい、急に無口になってしまった。

あの後、おふくろが僕を呼びに来て、無理やり手を引かれて帰ってしまった。

チラリと後ろに見えたあやのは、少し羨ましそうに僕を見つめていた。

「シーンゴ!」

急に声を掛けられて、またまた「はい!」などと間抜けな声を出してしまった。

あやのだった。

店に居る時と服装も変わり、どこにでも居るような“普通の娘さん”に見えた。

「シンゴ、びっくりしちゃった・・・まさかあそこで会うなんて」

小学校を卒業して、最初の年の同窓会で顔を合わせて以来、あやのとは音信不通だった。
幹事にそれとなく聞いたら、2年目以降、郵便が戻って着てしまったらしい。

そんなことを考えながら、二人でぶらぶら歩いている内に、ホテル街に来てしまった。

あやのは言った、
「どうする?」

「えっ」僕はわざとらしい返事を返していたが、実際迷っていた。

するとまたあの時と同じように突然、大粒の雨がパラパラと降り出した。
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