monoTone
「美月~、アイス買いに行こうぜっ!!」
「は?もう秋も終わるんだけど。アイスとか
さ、超季節外れだし」
「関係ねぇよ!!俺はいつでも、アイスを食い
てぇ時に食うんだよ」
「じゃあ、日向も一緒に行こうぜっ!!俺、ヤ
スと二人とか嫌だ」
「え?あたしも?」
「うんうん」
…アイツもついてくんのかよ。
「…二人で行って来い」
晴輝と徠斗がいない今日、京介はアイツと二
人でいたいらしい。
「…チッ」
小さく舌打ちした俺。
…なんでこんな女が好きなんだよ、京介。
別に悪い奴とは思ってねぇけど、人の過去に
踏み込む奴は、良い奴とは思えねぇ。
「美月よ~、気ぃ使ってやれよ。京介は、彼
女と二人きりで過ごしてぇんだよ」
「俺も、日向といてぇ!!」
「…気ぃ使え」
俺にもな。
過去の話なんて、したがる奴いんのかよ。
「ヤスのバーカ」
と言いつつも、ついてくる美月は可愛い。
クシャッと美月の頭をグチャグチャにして、
美月と肩を組み、アイスを買いに行く。
…なんで美月も京介も、アイツがいい?
「なぁ、日向はよ、なんでアイツでいいんだ
よ」
「は?アイツ?」
「…日向」
「日向~?俺にもわかんねぇけど、何か許せ
た。優しくしてくれたし…なんか、似てる気
するし」
「似てる?」
「何か…京ちゃんが、日向が高熱の日に助け
たの、わかる。だって日向、俺らに似てね?
何ってわけじゃねぇけど、どっか似てると思
うんだよな」
「どっか似てっか?アホなとこか?」
「そ~かもな」
笑ってる美月は、女にしか見えねぇ。
美月の笑顔からは…日向を信用してんのが、
よく伝わってくる。
…美月は、なんでそんなに、軽く過去を話せ
るんだ。
俺は話せねぇよ。
アイスを買って、京介の家に帰ると、京介と
アイツはまだ、勉強していた。
アイツら、バカじゃねぇの?
なんでそんなに、勉強好きなんだよ。
「日向、アイス」
美月が、アイツにアイスを渡す。
「ありがとう」
にこっと笑って、美月からアイスを受け取っ
たアイツには、悩みなんて無縁だと思う。
「…俺、バイク乗ってくる」
風に当たって、スッキリしてぇ。
バイクの鍵を握り、京介のマンションのエレ
ベーターに乗り込む。
エレベーターが閉まりかけた時、無理矢理乗
ってきたのは、アイツだった。