monoTone
「ヤスッ…」

息切れしてて、肩を揺らしているアイツ。

「何だよ」

「二人きりになったらっ…教えてっ…」

息切れしてんのに、無理して話すんじゃねぇ

よ。

無言でエレベーターを降りた俺は、バイクの

エンジンをつけ、バイクに跨がる。

ヘルメットを、アイツに渡した。

「え?」

「乗れ」

俺、風に当たって、冷静になるから。

「お前、頭冷やせ」

アイツが俺の後ろに乗り、俺に掴まったのを

確認すると、俺はバイクを出した。

あぁ…どこ行こう。

あ~、冷静になんか、なれっかよ。

とにかく、あそこに行くしかねぇか。

…あそこは、俺にとって、一番よく考えられ

るところだ。

少し大通りから外れたところにある海。

そこの海は、夏の7、8月くらいしか客が来

なく、俺の溜まり場だった。

この時期の海は、風が気持ち良い。

海に着くと、一息ついた。

…さぁ、アイツに話すかどうかだ。

「ヤス、ここどこ?」

「あ?チビはバカなのか?海だ、海」

「いや、海なのは見ればわかるけど…なんで

海?この海、思い出あるの?」

…思い出?

ありまくるわ、バカ。

「あ~、あるっちゃあ、ある」

「ねぇ…ヤス?何があったの?」

「あ?」

「中学の時」

真っ直ぐ俺の目を見て、中学の頃のことを聞

いてくるアイツ。

あぁ、そうか。

だから、美月も京介も許したんだ。

アイツは、人の目を真っ直ぐ見て、嘘も吐か

ず、ただ真実だけを聞きにくる。

…バカだな、こいつ。

なんでこんなに、真っ正面からぶつかってく

るんだ。

…そんなに素直だと、疲れねぇのか?

バカじゃねぇの?

俺は、こんなに静かに大人しく、相手を信じ

ることはできねぇ。

まぁ、俺もバカだけと。

だから…

「真剣に聞かねぇなら、話途中でやめるから

な。わかったか、チビ」

「チビって言うなっ!!ヤスも、真剣に話さな

いなら、途中で首絞めちゃうからね」

アイツに、過去を話そうと思う。
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