monoTone
「てめぇ、殺んのか?!」

「…上等だ」

喧嘩は嫌いじゃねぇ。

快感あるし、喧嘩というスポーツがあっても

いいくらいだ。

「…チッ」

顔も悪けりゃ、喧嘩もクソかよ。

「ヤスッ」

ギュッと抱きついてきた女。

「ふざけんな。離れろ」

無理矢理離したあの女は、俺を見つめる。

「あたし、やっぱりヤスが好きだな~」

「…は?」

「ヒロって、刺激ない」

「は?」

「ねぇ、ヤス。ヒロとは別れないから、お願

い。付き合って」

「無理に決まってんだろ」

本当…何でヒロは、こんな女がいいんだ。

「ヒロのこと…傷つけたくないんでしょ?だ

から、ヒロとは別れない。ヤスとあたしが黙

ってれば大丈夫だから」

「ふざけっ…」

“ふざけんな”そう言おうとしたのに、言っ

てる途中にキスされて、遮られた。

「てめっ…ふざけんなよ!!」

何で元カノでダチの女にキスなんかっ…

「おい、ヤス!!どういうつもりだよ!!??」

…何てタイミングの悪さ。

このタイミングで電話が終わったヒロはきっ

と、俺らがキスしてるのを見てしまっただろ

う。

「…ごめん、ヒロ。ヤスにキスしろって言わ

れて、無理矢理…でも、あたしがしっかり断

ればっ…!!ごめんなさい…」

泣き出した女。

「俺がいつ、てめぇにキスしろっつったんだ

よ!!」

女の胸ぐらを掴むと、右頬に激痛が。

「…ヒロ。俺は言ってねぇよ!!お前が本気で

好きな奴には手ぇ出さねぇよ!!」

「ふざけんな!!今やってただろうが」

あぁ…痛ぇよ。

お前の本気の殴りを受けた右頬より、心の方

が痛くて言葉が出ねぇよ。

恋って怖ぇな。

でもまぁ、お前が本気で好きになる奴が見つ

かったから、許してやるよ。

いくら殴っても、許してやる。

俺が油断してたから、キスされた…と言われ

りゃ、そうだし。

気が済むまで殴ったら仲直りして、アイス奢

れば許してやる。

「…っ…」

やっぱ…ヒロは喧嘩強ぇよ。

金狼の力…半端ねぇな。

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