monoTone
…知らなかった。

ヤスに、そんなに辛い過去があったなんて、

想像もついてなかった。

だから、中学生の頃を聞いた時に、あんなに

怒ってたんだ。

「…ごめん」

「謝んじゃねぇよ。チビなくせに、気ぃ使っ

てんじゃねぇよ」

「でもあたし…無神経だった。ごめん」

「あの時の女よりマシだから、安心しろ」

ふっと空を見上げたヤスの髪は、とっても綺

麗だ。

「ここよ~、ヒロとよく来たんだよな~」

昔を思い出して、懐かしむような、切なくな

って、涙を浮かべるような顔をしたヤス。

「…傷、今は痛くない?」

「普段は痛くねぇよ。時々…な」

「次痛くなった時は言って?」

「あ?何でだよ」

「あたしが一緒にいるから。一緒にいれば…

寂しくないでしょう?」

ヤスの傷が痛む時は、きっとヤスが寂しい時

か、ヒロが寂しい時なんだ。

だからあたしが、和らげてあげる。

「ヒロは…今、どこに?」

「まだ少年院だとよ。京介が教えてきた」

京介、ヤスのために調べてるのかな?

やっぱり京介は…優しい。

「一回も会ってないの?」

「会えるはずねぇだろ。俺は今でも、ヒロを

親友だと思ってる。けど、ヒロは違ぇよ」

「………そっか」

人の別れは、辛い。

あたしにとって…人との別れが、一番辛いこ

とのように思える。

「ヤス」

「あ?」

まだ空を見続けるヤス。

そんなヤスの目には、今何が映ってるの?

「寂しかった?」

「寂しかねぇよ。俺が目を覚ました時には、

京介がそこにいた」

「京介が…ね」

あたしと京介の出会いは、ただ同じクラスの

隣の席の人ってだけだった。

「出会い方は別だけど、あたしも京介と出会

えて良かったって、そう思ってるよ」

「お前は京介が好きだからじゃね?」

「…恋としては、わかんないけど。あたし、

京介が大好きだと思うんだ」

「恋か…俺、初恋まだだな」

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