monoTone
「あたし…初恋、記憶にない。初恋、もう終

わってるかもしれないし、終わってないかも

しれないんだ」

「それって、寂しくね?」

「あたし、よくあるから。ヤスは?初恋、し

たい?」

「俺には本気で好きになってくれるような奴

なんて、いねぇんだよ」

空を見上げてたのに、下を向くから、つい、

抱き締めたくなって、抱き締めた。

「おっ、おいっ!!チビ、やめろや」

「寂しかったら、言って?抱き締めてあげる

から」

「あ?なんで俺が、てめぇに抱き締められな

きゃいけねぇんだよ。京介に怒鳴られんだろ

うが」

「あたしからなら…怒んないでしょ?」

「んなこと、京介には、関係ねぇよ」

「もうそろそろ、帰る?」

「…だな」

ヘルメットを受け取って、ヤスのバイクの後

ろに乗って、ヤスの腰に手を回す。

「振り落とされんなよ」

そう言って走り出したヤスは…行きよりも、

帰りの方が、元気があるように見えたのは、

あたしだけなのかな?

京介の家に帰ってきたあたしは、京介にたっ

ぷり怒られた。

いきなり出ていったら、心配するだろうがっ

て、照れながら言われて、ちょっとだけ…嬉

しかった。

色々と聞いて、いっぱい考えたあたしは、疲

れ切ってしまったので、京介のベッドを借り

て、寝ることにした。

「ん~!!」

疲れたぁ。

「…大丈夫か?」

「ん?」

「…ヤスの話、聞いたんじゃねぇのかよ」

「…聞いたよ。いっぱい考えて、疲れちゃっ

た」

あたしが寝てるベッドに入ってきた京介は、

あたしをギュッと抱き締めてきた。

「…何考えた?」

「あたしは~…」

あたしは…

「ヤスをヒロと…会わせたい」

「…ったく、お前らしいっちゃあ、お前らし

いけど、難しいだろ?」

「そうなんだよね…どこの少年院にいるんだ

ろ、ヒロの奴」

「そこじゃねぇよ」

うわっ、鋭いツッコミ。

「じゃあ、どこに問題があんの?」

「…ヤスが会えるかどうかだ」

「会いたいはずだよ」

これは、断言できる。

「ヤスは、ヒロに…会いたがってた。あたし

は…ヤスの話を聞いて、そう思った」

「…お前は、鋭いんだか、鈍感なんだか、わ

かんねぇ奴だな」

「会わせてあげよ、京介。あたし、できるこ

とは何でもやるから」

「ヤスが傷つく。それでも、やるか?」

「もちろん」

「…バーカ。傷つくっつってんのに、迷いと

かねぇのかよ」

「ないよ。だって、ヤスが会いたがってるん

だもん」

「…今日は、とりあえず寝ろ。明日から、俺

が調べるから」

「うん」

頭を撫でられて、あたしは安心して夢の世界

に入っていった。





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