monoTone

「…ここ」

少し、壁の高い塀が連なる場所が、その少年

院で、ここは、脱獄しないために創られてい

るのだと思った。

「あたし、行ってくるね。ヤス、言いたいこ

と、あるなら伝えとくよ?」

「…別にいい。俺は来てないと言え」

「言わないことは無理。あたしがどうやって

きたかって聞かれたら、あたし答えられなく

なるじゃない」

「あ?」

「だから、言わせてもらうよ」

「ふざけんな。俺がいるって知っただけで、

あいつ、怒んぞ」

「怒らないよ、きっと」

「…んなこと、言い切れるかよ」

「言い切れるよ」

あたしの勘だけど、ヒロは今も、ヤスに怒っ

てることはない。

「…本当にバカだな、お前は」

「じゃああたしが、怒ってるかどうか、見て

きてあげるから、ここで待っててね」

「あ?」

「あっ、でも、あたしが行ったら怒るかな?

てめぇ誰だ?みたいな?」

「なるに決まってんだろうが」

「え~、あたし、怒られたくない。ヤス、つ

いてきてよ~」

「あ?」

「あたしが怒られて泣いて帰って来たら、ヤ

スが慰めてね」

「あぁ!?まじで、ふざけてんなよ」

「じゃあ、泣きっぱなしでヤスのバイクの後

ろに乗るもん。涙で背中、びしょびしょにな

っても知らないからね!」

「あ?ふざけんなよ」

「じゃあ、一緒に行こ?」

ヤスが返事をする前に、あたしはヤスの腕を

掴み、歩き出した。

「一歩、踏み出そ?あたしと一緒に」

「あ?」

「一人で行けないなら、二人で行こ?泣きた

くなった時は、慰め会えばいいでしょ?だか

ら一緒に行こ?」

「チッ。てめぇが寂しがるから、行ってやる

よ」

「うん。よろしく」

ヤスはやっぱり…会いたかったんだ。

あたしは、ヤスと一緒に中に入っていく。

受け付けみたいのを済まし、20分だけ、話す

時間を貰えた。

「ヤス、先に話してて。あたしがいきなり入

ったら、びっくりしちゃうでしょ?」

「てめぇはバカか。俺は、お前のためについ

てきてんだけど」

「だから、あたしのために先に行って。ヤス

が、ヒロと喧嘩しそうだったら、すぐ入るか

らさ」

「あ?」

「ドアの裏に背中つけて待ってる。だから、

ヤスもドアに寄りかかって話して。そうすれ

ば、安心できるから」

「お前に命令されたくねぇから言うけど、日

向、お前は背中、ドアにつけとけ。途中で泣

いたら、すぐに助けてやる」

「うん」

あたしたちは、背中合わせで安心できる。

ね、そうだよね?
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