monoTone

倉庫のドアを開けて、あたしより前を歩く、

豪瑠。

「わ~」

すごく大きくて、綺麗な倉庫だ。

中なんて、倉庫とは思えないぐらい綺麗で、

ソファーとか冷蔵庫とかもあって、もうここ

で生活できそう。

一人掛けのソファーもあって、そこは多分、

豪瑠の席だと思う。

「座れ」

一人掛けソファーの一番近い、三人掛けソフ

ァーを指差され、座った。

一人掛けソファーに荷物を置いた豪瑠は、冷

蔵庫に向かった。

「…何か飲むか?」

?」

「ある」

あたしは、ソファーで足をバタバタさせて、

楽しんでいる。

「このソファー、ふかふかだね~」

「…バカか、お前は」

「う~ん、成績はどうだか…」

「頭の問題じゃねぇよ」

「あはは…あたしは、きっとバカだね」

「ったく、お前は…」

「豪瑠だって、ドジなとことかあるでしょ?

あたしだけじゃないもん」

「ほんと、お前はいつまでたっても、成長し

ねぇな」

「いつまでたっても…?豪瑠とあたしって、

昔会ったこととかあった?」

「…ねぇけど。子供っぽいっつーこと」

「何それ。ひっど~い」

もらったオレンジジュースを飲み、豪瑠の顔

を除く。

「このオレンジジュース、美味しい」

あたしがそう言うと、微妙に笑った豪瑠。


―コンコンッ


部屋の扉をノックする音が聞こえて、その方

に目を向ける。

「失礼します」

「…何だ」

あたしと話す時は、1オクターブぐらい低い

声で話し出した、豪瑠。

「月星《げっせい》の奴らが探してるようで

す」

「チッ。来んの早ぇよ、あいつ」

「どうしますか?」

「テキトーに足止めしとけ。再起不能にすん

じゃねぇぞ。話がある」

「わかりました」

豪瑠と話が終わったのか、走って出てった、

豪瑠の仲間。

月星って…?

豪瑠は、今だ普通にソファーに座ってる。

「豪瑠、月星?は、いいの?」

「いい。後でどうにかする」

「ふ~ん」

この部屋は、豪瑠の香水の香りでいっぱいみ

たいで。

何か、眠い…?

「豪瑠~」

「あ?」

「眠い…かも」

「あ?じゃあ、5分で起こす。寝ろ」

「でも、京介…」

「5分で起こしてやるから。寝とけ」

「うん…」

もう、本当に眠くて。

瞼がすごく重かった。

ソファーに横になって、目を閉じる。

意識が薄くなる中、豪瑠があたしの頭を撫で

てるような気がした。

意識が飛ぶ瞬間…豪瑠が、この部屋から出て

行く音が聞こえた気がした。

意識が飛ぶ瞬間、京介の声が、聞こえた気が

した…
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