monoTone

断る必要…ないじゃん。

それでいいって、そこまで言ってくれてるの

に、冷たく振るなんて、できないよ…

それに、あたしが答えられないのを知ってい

て、好きなんて…言わないで。

「…大輔、あのね?」

「俺、日向に好きって返してもらいたくて、

好きって言ってるわくじゃないから。ただ、

気持ちを知っててほしいだけなんだ」

…いつも、そう。

ズルいんだよ、大輔は。

いつもいつも、返事はいらないって。

あたしが、こんな関係は良くないって言おう

としてるのに、いつも遮る。

あたしは、大輔が大切だから。

こんな風に、しっかり想ってくれない彼女じ

ゃない、もっと可愛くて優しい人と付き合え

ばいいと思うの。

…大輔、本当にいいの?

「…あたしだって、大輔が大切だよ」

そう返すあたしも、すごくズルい。

好きでも、嫌いでもない。

大切って言葉で、気持ちを表現して、終わら

せようとしてるから。

けど、その3つの言葉で、どの気持ちが一番

近いって聞かれたら、絶対に大切。

好きだけど…友達としてだし。

友達として、大輔は、すごく大切なの。

だから、大輔にはずっと傍いてほしいし、で

もこんな関係は嫌なの。

あぁ…あたしは、ズルい。

大輔に近くにいてほしいから…

大輔が、近くにいると安心できるから…

大輔が、あたしを想ってくれるから…

あたしは、大輔にしっかり別れを告げられな

いんだ…

「……ごめん…」

映画のエンディングで、映画館の中が包まれ

ている時に、そっと大輔に謝った。

ズルいあたしでごめんね…

あたし、今…大切な大輔を、傷つけているん

だよ?

あたし…やっぱり、大輔の傍にいたらいけな

いんだよね。

…あたしは、ズルいよね、ズルすぎるよね、

ひどいよね。

ごめんね…

「…ごめんね」

「ん?なにが?」

「え~っと、あはは」

「ん?なんだよ~」

「…映画、ついてきてくれてありがとね」

「当たり前だろ?俺、日向の彼氏なんだから

さ」

「そっか。そう…だよね」

「そうだぞ。ほら、クレープ屋あるよ。行く

だろ?」

「うん」

あたしは、甘い物が好き。

…知っててくれたんだ、大輔。

でも、あたしはやっぱり逃げる。

ごめんって言ったんだから、そのまま別れを

告げればいいのに、あたしは咄嗟に、違う言

葉を口にしていたんだ。

あぁ、こんなズルい自分は嫌いだ。

「クレープ、旨いな」

「うん♪おいしい」

あたしは、甘い甘いイチゴと生クリームとカ

スタードが入ったクレープを、まるで季節外

れのイチゴのような甘酸っぱい味を感じなが

ら、大輔と一緒に食べた。
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