monoTone
「京介…?」

「…お前、足」

「えっ?」

「…挫いたんだろうが」

「…気づいてたの?」

「…保健室、行くぞ」

「えっ?でも、あたし歩けない」

「…動くなよ」

「えっ…うん」

動くな、と言われたから、ずっと体育座りの

まま、動かないあたし。

京介は、さっきより少し近づいて、あたしを

抱き上げた。

「えっ…」

いやいや、またまたお姫様抱っこですか!?

「…歩けなくてもいいんだよ」

「まっ…待って!!落ちるっ…」

「なら、掴まれ」

少し汗をかいてる京介が、瞳にあたしを映し

た。

キュッと掴まって、京介に頼って、保健室に

連れていってもらう。

キャーと京介のファンからの声があがる。

男子には睨まれる…

京介、男子にも憧れられてるのかな?

あたし、男子に恨まれてるのか…?

「…ありがとね、京介」

「…別に」

いつもながら照れている京介に、バレないよ

うに、ギュッとくっついてみた。

「…落ちんなよ」

「うん」

京介に保健室に連れてきてもらい、手当てを

してもらった。

「無理して走るからこうなんだよ、バカ」

「でも、一位とってほしかったんだもん」

「…バカ。しばらく、自由に動けねぇぞ」

「でも、気づいてくれてありがとう、京介。

あと、走ってる姿、カッコ良かったよ」

「…バーカ」

「バカばっかり言わないでよ~。照れんなっ

て!!」

一つのベッドに二人で座った。

「…日向も。足痛ぇのに、よく頑張った」

滅多に見られない京介の笑顔を、本日二度目

を見て、頭を撫でられた。

撫でてくれる、この手…安心する。

「京介~、眠い…」

「寝るか?」

「うん」

座っていたベッドに寝転がる。

京介も寝転がって、二人で同じベッドで目を

瞑る。

雨の日に、熱が出た時も…看病してくれて、

一緒に寝たんだよね。

「前…看病してくれてありがとう。あと…ご

めんね。お兄ちゃんもひどいこと言うし、あ

たしもそのあと、ひどいことしたよね」

「…俺らは、お前を無理に連れてきたんだ。

言われてもしょうがねぇ」

「でも…」

「気にすんなよ。俺、寝る」

「あっ…うん。おやすみ」

あたしの髪を鋤いてから、目を閉じた京介と

一緒に、あたしも目を閉じた。

「…おやすみ」

一番綺麗な人は、優しかったね。
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