monoTone
「あたしには、京介が悪い人には見えないか

ら、違うって言ってほしいんだけどね」

「京介は、悪い人かって聞かれると、俺的に

は、悪い奴じゃないよ。喧嘩もするし、授業

とか出てないこともあるけど、根はいい奴だ

からさ。じゃなきゃ俺、仲良くしないよ」

「…そっか。そうだよね!!あたしも、京介と

話してても、悪い人には思えなかったから。

良かった!!」

「橘って、素直だよね」

「ん?素直?あり得ないよ~」

あたし、素直じゃないし。

素直なら、大輔に別れ告げてるはず。

「いや、素直だよ。優しいし。でも、優しす

ぎる」

「えっ?」

「優しすぎて、自分を押し殺しちゃうことも

あるみたいだね」

「そうかな?」

「言っちゃいなよ。橘らしく。自分の思って

ることをさ」

…はる君は、知らないはず。

あたしが、大輔を好きじゃないこと。

というか、気持ちを偽って付き合っているこ

となんて知らないはず。

女子友達にも、ラブラブだって言われるカッ

プルなんだもんね。

…でも。

それで良かった気がする。

…大輔が好きだから。

寂しくて寂しくて、離したくなくて、ずっと

一緒にいてほしいけど、ダメだよね。

あたし、大輔に恋愛感情はない。

あたしは、ただ一人になるのが怖いだけなん

だから、大輔をそれに巻き込むなんて、やっ

てはいけないことだから。

「ありがと、はる君。あたし、そうする」

「頑張れ。泣きたくなったり、泣いたりする

なら、メールして」

「うん」

…大輔と別れる、決意をした。






大輔を音楽室に呼び出した。

なんで音楽室にしたんだろう?

あ…そうだ。

あたし、この音楽室で、大輔に告白されたん

だった。

大輔と約束した時間、5分遅れ。

あたしは、音楽室に向かった。

大輔が、窓に突っ伏していて、あたしが音楽

室に入ってきたことは、気づいてないみたい

だな。

…最後だから。

最後だから、甘えたっていいよね?

あたしは、大輔の背中に抱きついた。

「わっ!日向…?」

「うん。日向」

「なんだよ、いきなり」

「いいじゃん。いきなりでもさ…」

「…どうした?話、あんだろ?」

「うん。…あのね?」

抱き締めるんじゃなかった。

できれば、この体温…離したくないよ。

「…大したことじゃないから、またでいい。

ね?」

「…良くない。俺、話聞くから…話して」

…なんでかな。

大輔は、今から話すこと、わかってるの?

今からあたし、大輔を振ろうと思ってるんだ

よね?

わかってるのかな?

……わかってなくていいよ。

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