monoTone
「…何があった?」

「えっ?」

「目。…何かあっただろ?」

「…昨日、夜遅くまで起きてたから」

嘘ではない。

「そういうことは聞いてねぇ。何を夜遅くま

で考えてた?」

…あんたのことだよ。

「今日のデートについて」

「…嘘つくなって」

ベッドに座っていたあたしは、後ろから京介

に抱き締められた。

京介の匂いがして、京介の低い声が耳に残っ

て。

あたしの心は痛くなった。

…嘘をつくのは苦手だ、嫌いだ。

「…わかんない」

「ん?」

「…好きって何?恋って何?」

「うん」

「あたし、京介のこと大好きだけど、恋とし

てなのかはわかんないの」

「…あぁ」

「京介が…あたしのこと好きなのかもわかん

ないし、傷ついちゃいそうで怖い」

「…傷つけられねぇよ」

「別れが…怖い。京介と、友達でいられなく

なるくらいなら…京介と、一緒にいられなく

なるのが、怖い」

「…別れることを前提にするな」

「あたしが京介のこと…好きにならなかった

ら、別れるよ?」

さっきより強い力で抱き締められた。

「……好きだ」

「…本当に?」

「もう言えねぇ…」

ちょっと振り返ると、京介の照れた顔があっ

た。

「…俺は、お前と別れるつもりはねぇ。それ

に…俺には日向を、俺に惚れさせる自信があ

るから」

クシャッと髪を鋤かれて、照れくさそうに笑

われた。

…なんだ。

簡単じゃん。

やってみなきゃ、わかんないんだ。

京介が、あたしを惚れさせてくれるんだ。

…やってやる。

「…泣くな」

京介に言われて気がついた。

あっ…あたし、泣いてるんだって。

「無理だよ~…だって、何で泣いてるか…わ

かんないし…」

京介が、あたしを自分の方へ向かせ、あたし

の涙を拭った。

京介があたしの顔に近づいてきて、距離を縮

める。

チュッとリップ音を立てて、目にキスをされ

た。

驚きすぎて、涙止まった…

「涙、止まったな」

ふわっと笑われたあたしと、笑った京介の唇

が…重なった。
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