ルージュはキスのあとで
悲しく響く言葉



22  悲しく響く言葉


 進くんは聞き上手。その上、聞き出し上手だと思う。

 気がついたら、今日のキスのことを話してしまっていた。

 長谷部さんと双子だという進くんなら、長谷部さんの気持ちが分かるんじゃないかと思ったからだ。

 時折、頷き相槌を入れながら静かに私の話しに耳を傾けていた進くんが、すべて話し終えた私を見て腕組みをして唸った。



「んー、真美さんはさ」

「はい」

「僕と京が双子だって知ってる?」

「はい、友人に教えてもらいました」



 頷く私に、そっかぁと少しだけ瞳を細めて優しく笑う進くん。
 その仕草すべてが、キレイで王子様といわれる所以を目の前で見た気がした。

 が、すぐに表情を固くした。無表情、そんな感じだった。
 そんな進くんを見たのは初めてだった私としては、ちょっと意外な感じがした。

 いつも人前では、ニコヤカ朗らかな進くんなだけに、その読めない表情が少しだけ怖かった。

 そして違和感を感じた。
 が、すぐに笑みを浮かべた進くん。

 いつもどおりの進くんがそこにはいた。


 
「京はね、秘密主義だから。わからないこと多いけど」

「そうなんですか……」



 双子だからといって何でもわかるわけではないらしい。

 まぁね、それぞれが個々の人格をもっているのだから、もっともといえばもっともなんだけどさ。

 よく以心伝心じゃないけど、双子だと考えることがよくわかるとか聞いたから、進くんと長谷部さんもそうなのかなぁと思っただけ。

 そんなふうに考えていると、目の前の進くんが難色を示した。
 少しだけ眉を顰めて、なにか言いにくそうだ。




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